ECは「売り場」から「付帯収益の起点」へ 〜 Uber Eats、ユナイテッド・シネマ、サイバーエージェントがRoktと語る、これからのECグロース戦略
Uber Eats Japan代表の中川晋太郎氏とRokt日本代表の三島健氏によるセッションの様子
コロナ禍を機にオンラインでの便利な購入体験が日本でも広く定着した。一方で、リアル店舗での買い物が当たり前に出来る日常が戻りつつある今、EC分野では単なる物販やサービス販売の場に留まらない新しい活用の可能性が模索されている。Rokt合同会社では2023年11月27日、EC・リテールメディア最新動向解説セミナー「The Future of Ecommerce Summit」を開催し、業界を牽引するUber Eats、ユナイテッド・シネマ、サイバーエージェントの3社を招聘。各社の具体的な事例を交えながら、ECグロースやリテールメディア戦略の最前線についての解説がなされた。
※この記事はExchangeWireの記事を転載・編集しています。
「メディア化」で、ECは付帯収入を生み出す場に進化する
冒頭のセッション「2023年最新調査から読み解くECの未来〜変化する消費者の期待と新時代のEC グロース戦略〜」にまず登場したRokt日本代表 三島健氏は、ECのビジネスモデルの変革を象徴するプレイヤーとして、米スーパーマーケットチェーンであるウォルマート社のIR資料を取り上げた。それによると、ウォルマートの分野別の売上としては、店舗事業が6.6%と堅実な成長を見せている一方で、EC事業では12%、広告事業では30%と、デジタル分野での伸び率が非常に高い。ウォルマート社は、リテーラーの保有するデータと顧客接点を活用した新たな広告手法である「リテールメディア」の事業を、世界をリードする形で導入、発展させてきている存在だ。
「この伸び率はIRでも目玉の一つとして取り扱われていた。ウォルマートでは直接的収益の最大化が終わり、周辺事業でどのように収益を作り上げていくかの議論や取り組みが加速している。その起点となっているのが、同社のECサイトだ(三島氏)」
同セッションに登壇したUber Eats Japan代表の中川晋太郎氏は、「Uberもコア事業を作りあげたうえで、周辺領域に事業展開を広げてきた」と説明。ライドシェア(配車アプリサービス)というコア事業で構築したプラットフォーム基盤を活かし、フードデリバリーやクイックコマースなどの領域にもビジネスを拡大してきたUberでは、現在同社のプラットフォーム上における広告配信事業にも注力しているという。中川氏は「消費者はお得感を求めている。広告事業によってUberが少しでも利益を増やして、それを利用者に還元をするというエコシステムを構築していくことが一番正しい姿であろうと、社内で考えがまとまった」とその理由を語った。
Uber Eats は、Roktとのパートナーシップにより、顧客が商品を注文した瞬間に、ファーストパーティーデータをリアルタイム分析。
直後に表示される注文完了画面上で、顧客にとって関連性の高い外部広告主によるオファーを提示している。
一方で、ECにおける購買ジャーニーの中で広告やマーケティングメッセージを受け取る際、消費者心理はどのように働くのか。三島氏のこの疑問に対して、中川氏は「お得なオファーであっても、最適なタイミングで届けなければ逆効果になり得る」と指摘。また「Uberはグローバルカンパニーであり、情報の利用には慎重な傾向はある」としたうえで、「お客様に合った内容のオファーを届けるためには、ECサイトやアプリを通じたファーストパーティデータの収集・分析・活用が大事だ」と強調した。
「データ」と「モーメント」の両立がECのメディアとしての価値を高める
続いてのセッション「高まるEC の『メディア』としての価値〜 『データ』と『モーメント』がもたらす新たなステージ〜」では、株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部ADNW ・DSP ・CPI 局 局長の白井 光輝氏(写真右)とRokt ビジネス開発の大野 皓平氏(写真左)が登壇した。
白井氏は、これまでのデジタル広告の潮流の変化を振り返りつつ、昨今急速に普及するリテールメディアを「サーチ」、「ソーシャル」に次ぐ「第3の波」となるメディアと表現。現在の市場環境下において、広告主(広告代理店)、またマネタイズをする側のメディアが共通して抱える課題として、Cookieの規制や広告配信効率の適正化など、データ活用に関する問題が多く挙がっていることを取り上げた。これらの課題にミートするのが、ECサイトを起点としたリテールメディアだとし、次のように語った。
「ECサイトがユーザーから許諾を得たファーストパーティデータを活用することができれば、顧客についての情報や、カートに入れた商品、決済情報など、細かいデータがクリーンな状態で手に入るため、その分、一人ひとりの顧客にとって関連性が高く、メリットのある情報を提供できることになる。さらに、何かモノを買おうとしているタイミングでリーチできるため、ユーザーにとって受け入れやすい瞬間であることも特徴だ。」
また、Roktが提供するECでの”購入完了後”に特化して広告オファーを提示するソリューションについては次のように評価した。「広告主目線では、実際にお客様が購買を終えた段階のファーストパーティデータを活用できるため、広告の精度が担保されている点は魅力的で、シンプルに需要があると思っている。Roktを介せば、Roktネットワークに参画する複数のECサイトの購入完了ページに横断的に出稿でき、その中でも自社のキャンペーンと親和性の高いユーザーにリーチできる点は心強いのではないか」(白井氏)
自社サイトの高単価・高収益な広告メディア化をRoktと実現したユナイテッド・シネマ
「顧客体験と収益向上を同時に実現したユナイテッド・シネマのEC リテールメディア戦略」には、ユナイテッド・シネマ株式会社マーケティング本部 本部長の西村 大介氏(写真右)とRoktビジネス開発の松田 誠氏(写真左)が登壇。
ユナイテッド・シネマでは自社ウェブサイト上で映画チケットを販売しており、Roktと共にECサイトのメディア化による付帯収益の創出にいち早く取り組んで来た。
西村氏は「上映される映画がどれだけヒットするかが不透明な以上、飲食や物販など、チケット以外での収益を作りあげていくのは本業と同じくらい重要なミッションである」と説明。特に、ECサイトは実際に映画館に足を運ぶ来場者の3倍以上のユーザーがアクセスしており、同社でも重要な収益チャネルのひとつに位置付けられている。
以前は「情報媒体」としての側面が大きかった同社サイトだが、コロナ禍の影響もあり、現在はチケットの「販売の場」としても大きく機能するように。「チケット購入におけるオンライン比率は、サービス開始当初は数%に過ぎなかったが、現在ではほぼ半数のチケットがオンラインで購入されている(西村氏)」サイト上で発生する「トランザクション」のボリューム増加を受けて、ユナイテッド・シネマでは新たなマネタイズ手法としてRoktのソリューションを導入。ユナイテッド・シネマが保有するファーストパーティデータを活用し、購入完了後の瞬間に、顧客にとってレレバンス(関連性)の高い広告を配信する取り組みを進めてきた。
その成果について西村氏は「ユナイテッド・シネマでは業界に先駆けてウェブサイトの収益化に取り組んできたが、Roktの広告ソリューションは他の広告配信ツールと比較しても圧倒的に単価が高い。Roktは、サイトを単なる『面』と見て一律的な広告配信をするのではなく、データによって『人』を見た上で最適化した内容の広告配信をしているので、広告主にとってのハイパフォーマンスと媒体社にとっての高収益につながる好循環が生まれている」と評価した。
松田氏は「ECを単なる『バーチャルな売り場』と捉えるのではなく、さらなる事業成長のドライバーとして活用すべきだ」と熱を込める。「付帯収益が事業の競争力を決定づける時代と言われている。ECサイトは、各社が磨き込んで構築した、顧客との貴重なタッチポイント。ここで得られたファーストパーティーデータを適切に分析活用すれば、お客様にとって最適な情報やお知らせを届けレレバントな顧客体験を創出しつつ、広告を通した付帯収益を生み出すことが可能になる。そのために、ぜひRoktとのパートナーシップを検討していただければ」と語った。
※ユナイテッドシネマ登壇セッションはこちらからも視聴可能